1886年のコーラのオリジナルレシピを元に自家製コーラを作ってみる<準備編>
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パリのレストランの再開とバーの物件探し
ロックダウンも6月に解除され勤務するサンジェルマンデプレのレストランもようやくテラス営業のみという形で再開しました。
ところが7月に入っても招集がかからないのでマネージャーに連絡したところ”バーマンは9月までお休み”とのサプライズ休暇を頂いてしまいました。
急に時間が出来たのでパリ市内の空き店舗物件を探しに不動産巡り。
ロックダウン中に閉業したお店も多く希望に合う物件も見つかるかもしれません。
減圧蒸留機の購入をきっかけに蒸留の興味も沸き、スイスでお会いしたMitosaya蒸留所の江口宏志さんの本を読んでいると ”蒸留所併設のバーができたら楽しいなあ” などとまだあまり現実味の無い絵を描きつつ自転車でパリを廻っています。
パリで蒸留酒、カクテル等をサービスする場合はライセンスIVと言われる特別な許可が必要になります。ライセンスIV付きの物件にはカフェなども含まれ、紹介された物件の中には街に馴染んだ古いカフェもなどもありました。
いずれも立地が悪く諦めましたがクラシックな雰囲気を残す店舗はとても魅力的で自分でお店をやる際は、地元のお客様に愛される街に溶け込んだお店にしたいと考えるようになりました。
カフェタイムでも価値のある物を提供したい
パリには本当に沢山のカフェがありますが有名どころは観光地のようになっており(人間観察などそれはそれで楽しいのですが)美味しいコーヒーが飲めるお店や地元パリジャンが集まるお店はちょっと隠れたところにあります。
物件を探している11区には小さな飲食店が集中しており、そこに集まる若者はおしゃれで新しいものが大好き、あまりにもクラシックで華美な誇張されたもの嫌うようなBOBO(ボボ:ブルジョワ・ボヘミアンの略)と言われる人たちです。
ワインで言うならクラシックなボルドーワインより規格外の新生ナチュラルワインを好むような、ランチはホテルリッツに行くより地元カフェのブランチの方が楽しいから好きといった人種かもしれません。お金より愛と喜びのZAZの「Je veux」の世界のような。
僕自身、ワインもそうですが作り手の顔が見えるものが大好きです。
自分でお店をやる際にはカクテルはもちろんソフトドリンクも手作り感のあるものを提供したい、コーヒーやパティスリー、そうコーラも作ってみよう!そんなインスピレーションから門外不出と言われるコーラのレシピを探る一週間が始まりました。
1886年のコーラ・オリジナルレシピを検証
コーラは1886年に薬剤師によって作られたコカの葉の成分を含む薬効のあるドリンクだったようです。現在のレシピとは大分違うようですがまずはその起源に迫ります。
下記の写真は1979年にアトランタジャーナルに掲載されたコーラの起源となるレシピです。新聞掲載当時は”コーラのレシピが暴かれた”とずいぶんと話題になったとの事。コカの成分は当時の流行病であったマラリアのへの薬効も期待されていようです。
主なレシピは下記の通りです。
コカシロップ
水、砂糖、クエン酸、バニラ、カフェイン、ライム、コカ抽出物、カラメル
7Xフレーバー(エッセンシャルオイル)
オレンジ、レモン、ナツメグ、コリアンダー、ネロリ、シナモン、アルコール
フレンチコカワイン?
上の写真をSMSでシェアしたところフランス人から ”世界初のコーラはコルシカ発で当ワインとリキュールを使ったものだったんだ。その後そのレシピを元にアメリカ人が手を加えコーラを作ったんだ” とご当地自慢入りの有益な情報メッセージを頂きました。
早速調べてみるとありましたフレンチコカワイン!
1863年にコカの医学的および経済的可能性に興味をそそられたコルシカの医者マリアーにさんが”ヴァンマリアーニ”と言う名前で発売した今でいう栄養ドリンク。ボルドーワインとコカをベースに健康、強さ、エネルギーの回復薬として売り出したようです。
材料集めにパリを奔走
エッセンシャルオイル
当時のレシピを元に早速材料集め開始です。
エッセンシャルオイルは全てパリのAROMA ZONEで揃えました。
ネットでも買えますが実際に香りを確かめてから購入したいのでODEONの実店舗まで買いにい行きました。いつ行っても手作りのオーガニックコスメやアロマを作ろうとパリのおしゃれな女子でいっぱいの人気店です。
実際にコーラを作ってみようという方はオイル購入の際には食品グレードである事を確認してください。フランス語表記の場合「Alimentaire possible」と明記されていれば大丈夫です。
次に探しに行ったのはアラビアガム、カフェインパウダー、キャラメルです。
アラビアガム
当時のレシピのままだと現代のオイルの抽出技術が当時より上がっているので薬っぽくなる為、調整が必要なようです。
その中でもアラビアガムは乳化剤および”とろみ”を出し口当たりを良くするものとして少量加えたいと思います。
グレードの高い植物由来のアラビアガムを探しにまずはパリ2区のG.Detouへ。
マニアックなパティスリー用の材料はほぼここで揃います。お店の方に聞くと直ぐに出してくれました。パティスリー用ですのでもちろん粉末になっています。
因みにこの界隈は「MORA」や「A.SIMON」と言ったパティスリー用の製品のお店が沢山ありお菓子作りが好きな方は見て歩くだけでも楽しいと思います。また料理本しか置いてないスペシャルな本屋さん「LIBRAIRIE GOURMANDE」もその先にありますのでプロの方は必見です。
カフェインパウダー
次に探したのはカフェインパウダーです。
こちらは微かな苦味を加える為使いたかったのですがどのお店に聞いても「プードゥル・ドゥ・キャフェインん !?」と驚かれてしまいました。ネットでタブレットなどは売られているのですがあまり一般的では無いようです。
コーラにカフェインを加えている意図を調べたところ、カフェインに含まれる微かな苦味は他の味と混ざることにより味全体を複雑にし、甘さを引き立てる作用があるためとの事でした。丸ごと食べる川魚のあの苦味と味の複雑さと味の調和、カフェイン抜きのコーラの物足りなさはそういう事かと腑に落ちました。
さて、無い物は無いで仕方ありません。苦味についてはニガヨモギ、あるいはセンブリか何かで代用する事にしましょう。そのほうが自然ですし、手作り感があってしっくり来ます。
リン酸
コーラのみならず多くの清涼飲料水に含まれているものに「リン酸」があります。
キャラメルシロップ
キャラメルであのコーラのダークカラーを作ります。今回は味の変数を減らすため購入しました。砂糖と水で作れて焦がし具合も調整できるのでいずれは自家製キャラメルで挑戦です。
コーラの実
カフェインの代わりとなるナチュラルなもの、考えた結果ここはコカコーラのオリジナルに忠実にコーラの実を使う事にしました。
コーラの木の実は「コーラナッツ」と呼ばれ、昔のコカコーラの原料です。
コカコーラの名前も「コカの木」の葉から抽出された成分と「コーラの木の実」の抽出液から作られる為「コカ&コーラ」と命名されました。
あまり日本では知られていない気がしますがフランスには日本の漢方のように薬草(ハーブ)の効果は古代よりその有効性が認められ実生活に溶け込んでいます。
眠れない夜はヴェルヴェーヌやカモミールのティザンヌを飲み、風邪を引いたかなと思ったらタイムを煎じる。火傷にはラベンダーの軟膏を塗り、切り傷にはローズマリーの精油を一滴といった感じに親から子へ受け継がれる生活の知恵となっています。
医療の世界においても1940年頃までは植物療法が主流でした。全盛期には「エルボリストリー」という薬草専門店がフランス全土に約2万軒あり、国家資格を持つ薬草専門家「エルボリスト」が数百もの薬草を調合して販売していました。
しかし1941年には法改正でエルボリストの国家資格が廃止。1950~1960年代に化学療法が全盛期を迎えると、伝統的なエルボリストリー は現象の一途を辿ります。植物療法の衰退に伴って、フランス人のティザンヌのイメージも「お年寄りの飲み物」、「時代遅れの古めかしいもの」と受け取られるようになっていきました。
ところが2000年に入り健康志向の高まりと植物療法への回帰によりフランス人のティザンヌへの興味や関心は回復。カフェインや砂糖を含まないことが好まれて若い世代でも消費が伸びています。
今回使用するコーラの実もパリ最古のエルボリストリー 「Herboristrie de la Place Clichy 」で購入しました。白衣を来た女性のエルボリスト達がお客の症状や要望を伺いハーブを調合する様はまさに薬剤師さんそのもの。ドラクエ全盛期に少年時代を過ごした僕には薬草を扱う仕事など特に神々しく見えてしまいます。
これでようやく全ての材料は揃いました!
「調合編」に続きます。
参考:ロハスメディカル、ルピシア
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